
新型インフルエンザによる死者が相次いでいる。沖縄や神戸で亡くなった3人は、いずれも腎臓病や糖尿病など持病を抱えたケースだ。事実上の「本格流行」が始まった今、慢性疾患を持つ患者や妊婦、抗がん剤使用者ら感染すると重症化しやすい人たちの命を守るにはどうすればいいのか。専門家に聞いた。(中曽根聖子)
毎年1万人前後が亡くなる季節性インフルエンザの死者は大半が抵抗力の弱い高齢者だ。ところがWHO(世界保健機関)や厚生労働省によると、新型インフルエンザで重症化しやすいのは人工透析患者のほか、ぜんそくや心疾患、肺疾患などの慢性疾患を持つ人、抗がん剤や免疫抑制剤の使用者、妊婦、乳幼児など。
今回、国内初の死亡例となった沖縄県と神戸市の男性は腎不全で人工透析治療中。名古屋の女性も多発性骨髄腫と心不全を患っていた。3人とも重症化の典型例といえる。
元小樽市保健所長の外岡立人さんは「海外での死亡例の7~8割が妊婦や持病を抱えたハイリスク者。健康な人ならほとんどが軽症で済むが、抵抗力が落ちているハイリスク者は肺炎などを併発して重症化しやすい」と注意を呼びかける。
≪米国で妊婦死亡例≫
米国では妊婦の死亡例もある。米疾病対策センター(CDC)によると、4月中旬から6月中旬までに新型インフルエンザで死亡した45人のうち6人が持病のない妊婦だった。外岡さんは「米国では新型インフルによる死者の6%が妊婦という報告もあり、発熱で流産の危険性も増す」。
日本産科婦人科学会では妊婦同士の感染を避けるため、感染の兆候がある場合はかかりつけ産婦人科医ではなく一般病院への受診をすすめている。また、感染が確認された場合には、タミフルなど抗ウイルス薬の積極的な服用を呼びかけている。
ふだんから持病を抱えて人や妊婦は発熱などの症状にどう対応するのか、かかりつけ医と事前に話し合っておくことも大事だ。「感染初期に抗ウイルス薬を投与すれば重症化を防ぐことは可能だ。せき、鼻水、発熱やのどの痛みなどの症状が出たらすぐに医療機関で受診を」と外岡さん。
≪うつさない配慮も≫
秋以降のさらなる感染拡大に備え、リスクを減らすにはどうすればいいのか。
東京慈恵会医科大(東京都港区)の浦島充佳准教授が第一に挙げるのは、感染者と接触の機会が増える医療機関への受診回数を減らすこと。「ぜんそくや糖尿病など慢性疾患で症状が落ち着いている場合は、薬の長期処方を頼んでみては」と話す。
家庭や職場など周囲の配慮も欠かせない。家族にハイリスク者がいるケースでは、うがい・手洗いの励行、人ごみを避けるなど、うつさない工夫と思いやりが大切だ。万一、寒けやだるさなど自分に感染の兆候を感じたら、ハイリスク者と食事の時間をずらしたり、部屋を別にするなど早目の対策を心がけたい。
浦島准教授は「窓がない部屋など密閉空間はウイルスが蔓延(まんえん)しやすい環境にある。大勢が集まる場には、せきや発熱など症状がはっきりしない感染者もいるので、こまめに換気をすることも忘れずに」とアドバイスする。
■患者数突出の沖縄
15日に国内初の死者が出た沖縄県。国立感染症研究所によると、今月16日までの1週間に報告された患者数は1医療機関の全国平均1・69人に対し、沖縄は29・6人と突出している。
なぜ沖縄で多いのか。東京慈恵会医科大の浦島充佳准教授は「もともと冬がない熱帯気候の地域では、季節性インフルエンザは雨季に流行するケースが多い」と指摘。そのうえで、「地球温暖化のせいか沖縄でもここ数年、梅雨明けの6月から8月に流行のピークを迎える傾向が続いており、新型インフルエンザも同じ時期に感染が拡大したのではないか」と推測している。
(産経新聞)
Copyright (C) 感染症予防と衛生材料の専門店「パンフル」. All Rights Reserved.
運営:メディカル・セブンディー