
■生もの原因、劇症化や拡大例も
ウイルスに汚染された水や食材などから感染するA型肝炎の患者が、今年に入って急増している。慢性化する恐れはほとんどないが、最近では高齢の患者も増えており、劇症化すれば死に至るケースも。患者の周囲で感染が拡大する可能性もあり、国立感染症研究所は注意を呼びかけている。(道丸摩耶)
◆西日本で感染増
感染研の集計によると、今年1月4日から4月18日までにA型肝炎と報告があったのは、121例。これは昨年1年間の感染例(115例)を上回る。特に3月中旬以降に患者が激増。地域でみると、福岡、広島など西日本で多く、劇症化した3例のうち、60代の患者が死亡した。
患者が急増した3月8日~4月4日までの61例を感染研が分析したところ、感染者は男女半々。4割近くに生ガキを食べた経験があった。
東京都健康安全研究センターによると、4月25日までの都内のA型肝炎の患者数は19人で、「例年より速いペースで発症者が増えている」(ウイルス研究課)という。例年は海外渡航者が感染する例が多いが、今年は9割近くが国内で感染したとみられる。
感染症に詳しい「ナビタスクリニック立川」(東京都立川市)の久住英二院長は「A型肝炎は通常、冬から初夏にかけて患者が増える傾向にあり、今後も激増を続ける可能性は低い」とみる。しかし、「潜伏期間が長いため、家族や近親者は知らない間に感染してしまうこともある」(同)といい、注意が必要だ。
◆海外渡航者も注意
なぜ患者が急増しているのか。
「A型肝炎は米国などでも周期的流行を繰り返している。潜伏期間が長いため原因を特定できないことが多いが、生ものが原因となるため、米国では生ものを多く食べる民族が多い地域に集中してワクチンを接種することで、患者の減少に成功した」(久住院長)
日本では、子供のころ衛生状態が悪かった55歳以上では抗体を持つ人が多いが、若い世代ではほとんど抗体がないという。そのため、魚介類などの生ものを食べる際は十分に加熱することが重要だ。また、人によっては風邪症状で終わる場合もあり、知らない間に家族に感染しているケースも考えられる。血液検査で肝機能の数値を見れば特定できるため、発熱や胃腸炎の症状が出たら早めに受診したい。
「健康な人であれば命を落とすことは少ないが、肝疾患のある人や集団生活をしている高齢者などは重症化、感染拡大のリスクが高い」と久住院長。こうしたハイリスクの人には、ワクチン接種が有効となる。
久住院長によると、日本では16歳以上に接種が認められ、3回接種すれば15年程度、抗体が維持できるという。また、1カ月以上海外に滞在する1000人に1人が感染するともいわれており、久住院長は「発展途上国など海外に渡航する人は、事前にワクチンを受けてほしい」と注意を呼びかけている。
【用語解説】A型肝炎
カキや海産物などからA型肝炎ウイルスに感染し、排泄(はいせつ)便からさらに感染が広がる。2~6週間の潜伏期間を経て、発熱、倦怠(けんたい)感、黄疸(おうだん)、吐き気などの消化器症状が出る。衛生状態の良い日本では感染者が激減し、55歳以下では特に抗体保有率が低い。まれに劇症化して死亡する例もあるが、一般的には安静にして栄養を取れば、1~2カ月で回復する。予防には食材の加熱処理、手洗いなどに加え、ワクチンが有効。最近は患者が高齢化、重症化傾向にあり、施設内の集団発生や家族内感染への注意も必要だ。
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