2010/09/03 帝京大病院 院内感染 情報共有に遅れ、拡大防止策後手に
帝京大病院(東京都板橋区)で3日発覚した、多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニによる院内感染。46人もの感染者を出した背景には、病院内での情報
共有が遅れ、拡大防止策が後手に回ったことがある。同病院には、複数科にまたがる医師や看護師らで構成し感染症に対応する「感染制御委員会」があり、院内
感染を疑われる場合には委員会に報告し、感染制御部が対策を実行する仕組みがある。だが、今回の件ではその体制が十分機能していなかった。【藤野基文、大
場あい】
現場の医師や検査部署は、今年2月にはすでに、耐性菌の感染が増えていることを把握していた。感染制御部が同月、各科に対し注意喚起の通知を出したが、「散発的な発生」と見て委員会へは報告せず、病院全体での対策は取られなかった。
月間9人の感染が確認された4月の時点で、感染者は九つの病棟にまたがっていた。こうした事態に病院側は5月の連休明け、初めて院内感染の可能性と対策の必要性を認識したという。
調査の結果、感染は09年8月から今年8月まで毎月発生していた。病院は7月30日に調査委員会を発足させ、外部の専門家をまじえて対応を協議。院内の
感染対策講習の徹底▽保菌者を特定の部屋や病棟に集めて管理する▽感染制御部スタッフの専従人員を増やす−−などの提言を受け、8月9日に対策を始動し
た。
厚生労働省は、耐性菌の院内感染が確認できた時点で国へのすみやかな報告を求めているが、同病院が東京都や板橋区、厚労省へ報告したのは、対策開始から
1カ月近くたった今月2日。森田茂穂院長は「現場の対策で手いっぱいで報告が遅れた。もっと早く報告すべきだった」と、3日に開いた会見で謝罪した。
院内感染対策に詳しい松本哲哉・東京医科大教授(感染制御)によると、多剤耐性アシネトバクターは、イラク戦争で負傷した米国人兵士らの感染例が多く、米国内でも感染拡大が問題になっていた。
一方、国内での感染例は非常に少ない。福岡大病院での院内感染(09年1月)は、韓国で肺炎を発症し帰国後に入院した患者から検出された。これが院内で広がったと推定されている。
松本教授は「国内での感染例はまれなので、一つの医療機関での感染例が1、2人にとどまらず、それぞれの確認時期があまり空いていないようなら、院内感染を当然疑うべきだった」と話す。
感染者がいる病棟や診療科が違っていても、患者の検体を調べる部署は限られ、院内で感染が増加していることは把握可能だという。松本教授は「46人という感染者数は非常に多い。もっと早く対策を取ることができたのでは」と指摘する。
毎日新聞