
ほとんどの抗菌剤が効かない「NDM1」と呼ばれる遺伝子を持つ新たな耐性菌(スーパー耐性菌)が独協医科大病院(栃木県壬生(みぶ)町)の入院患者から検出された。新型耐性菌は従来の耐性菌より病原性が強いため、免疫力の落ちた入院患者だけでなく、健康な人にも感染する可能性がある。NDM1が大腸菌などからより病原性の強い別の種類の菌に移る可能性もあり、専門家は警戒を強めている。
NDM1を持った菌は大腸菌や肺炎桿(かん)菌が変化したタイプで、2007年にインドで初の感染者が確認されて以降、欧州や米国などに拡大した。「日本上陸は時間の問題だった」と専門家は語る。
多剤耐性菌としては、帝京大病院で院内感染があった「多剤耐性アシネトバクター(MRAB)」などが知られるが、大腸菌や肺炎桿菌はより病原性が強い。大腸菌は健康な人でも感染すれば膀胱(ぼうこう)炎や尿道炎を起こす恐れがあり、免疫力が落ちた人の場合は、敗血症などで死に至ることもある。
順天堂大の平松啓一教授(細菌学)は「アシネトバクターなどは院内感染に注意していればよかった。大腸菌などはより病原性が強く、健康な人にも感染が広まる可能性がある。誰もが持っている常在菌で抗菌剤が効かなくなるのは恐ろしいことだ」と指摘する。
さらに問題なのは、抗菌剤への耐性が、より病原性の強い菌に移る可能性があることだ。東邦大の石井良和助教(医学細菌学)は「NDM1は菌同士が接触することで移る可能性がある。赤痢菌やサルモネラ菌は同じ人間の腸の中にいる細菌で、耐性遺伝子を獲得すれば大変なことになる」と危機感を強めている。
一方、国立感染症研究所の荒川宜(よし)親(ちか)部長は「健康な人ならばほぼ無害」と指摘。「新型耐性菌に感染して膀胱炎などになっても抗菌剤以外に治療法がある。感染症の症状が出たら早めに受診し、適正な治療を受けることが大事だ」と話している。(千葉倫之)
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